ハウツー本の功罪
2007 / 03 / 16 ( Fri ) 最近「愛犬を天才犬に変える」とかいう、これさえ読めばあなたもカリスマ飼い主的躾本を売るサイトからやたらTBが送られてくる。
おそらく犬をキーワードにやたらめったらTBを送りつけているのだろうが、あまりしつこいのでちょっと覗いて見たところ、ずいぶんごたいそうな値段の本なのだ。おまけに愛読者の声みたいなコラムもあって「嘘だろうと思ったけれど、藁にもすがる思いでこの本を買って読んでみました。翌日から実践したところ、なんと! 1週間ほどで見違えるような成果が!!!」てなことが書いてあり、これって女性週刊誌によくある「1ヶ月で15kgの減量に成功!!!」っていうのと同じノリね、と心密かにほくそ笑む管理人である。 別にこの「見違えるような成果が!!!」の人が嘘をついているとは言わないが、本1冊読んだぐらいで犬が劇的に変わるようなケースは、おそらく飼い主の接し方が根本的にものすごくまちがっていたのだ。それを直すくらいなら、最初から大枚はたいて躾本を買わなくても、しつけの基本みたいな内容のフリーのサイトはいくらだってある。そういうサイトを10カ所ぐらい徘徊して、そこに書いてある意味(手をどの角度に挙げるとか、何秒で褒めるといったノウハウじゃなくて、なぜそういう行動をとるべきかっていう理由の部分ね)をよく考えてみれば自ずと正解は見えてくる。 それにしても、日本人ってハウツーものがとことん好きだよな、と管理人はつくづく思う。犬の躾本にしても図解入りのわかりやすいものがいまや主流だし、この1冊であなたの犬が名犬に! みたいな本はほんとに巷に溢れかえっている。 ちなみに躾本を読んで変わるのは犬じゃなくて飼い主なんだがね。ほら、犬は躾本読まないしさ。だから正しくは「あなたの犬を名犬にする本」じゃなくて「あなたをまともな飼い主にする本」なのだが、なぜか世間ではこういう本を「犬の躾本」として売っている。そうじゃなくて正しくは「飼い主の躾本」なのね。まっ、仕事柄細かいところに難癖つけるのは、管理人の悪い癖だけど。 管理人も以前はこの手のハウツー本をいくつか手にとってみたのだが、いまはほとんど読まなくなった。なぜなら一般的なハウツーものは、しょせん一般的な話しか書いてないし、3冊も読めばだいたい内容は似かよったものだからだ。ちなみに管理人は英語日本語両方のハウツー本を読んでいるが、両方ともだいたい内容は同じだね。まっ、犬の飼い方なんてスタンダードは日本もアメリカもイギリスもたいしてちがいはないってことだ。 最近、管理人がよく読むのは訓練士や犬好きのマニアが書いているエッセイ集の類だ。たいていは自分が扱った犬のことや、歴代の飼い犬について書いてあるのだが、なかに「ああ、姫もこういう行動とるな」とか「なるほど、カイはこういう理由でああいうことをするわけだ」と思いあたる部分が出てきてけっこう勉強になることが多い。素人飼い主である以上、一生のあいだに出会える犬の数にはかぎりがあるわけだし、プロの訓練士さんのようにたくさんの事例を目にする機会はないわけだが、こういう本を読むんでさまざまなパターンを学ぶことで、管理人は犬飼い引き出しを増やしている。 たまに珍しい犬種に出会うと、あぁ〜これが、あの本に書いてあったやつだな!と嬉しくなる。じっさい、ビーグルの吠え声がうるさいというのは知識として知っていたが、ほんとうのものすごさを知ったのは、姫が我が家に来てからだ。 犬のトレーニングのハウツーものに関しては、常時最新の話題作が翻訳本として出版される。だがこの手のエッセイというのはあちらでも一部のマニア向けの書籍だし、たいていそれほど売れることはないせいか、めったに翻訳されて出版されることはないようだ。結構おもしろいし、ためになるのになと管理人などは思うのだが、出版業界もいまはすっかり厳冬期なのでやはり売れない本は出さないのだ。 アメリカのアマゾンを覗いていると、ハウツー本にもそれこそ色々な種類のものがある。日本とのちがいは、問題行動に特化したそれが出ていることだ。「ビビリ犬を直す方法」「攻撃的な犬の対処方法」などほんとうにさまざまな本があり、それこそステップバイステップで細かく対処方法が書いてあるのが特徴だ。なかには、「成犬からの飼い方」「他の飼い主に飼われていた犬の育て方」などというsecond hand dogが当たり前の国らしい本もあり、羨ましいなと思うのだ。 日本で出ているハウツー本は、やはりパピーから飼うことが前提になっているものがほとんどだ。だから、成犬から飼って躾なおしをしようとするとノウハウじたいがわからない(じっさいは、パピーのやりかたと大して変わらないのだが、何も知らなければそれすらわからない)。だから多くの飼い主さんが、その対象年齢をすぎてしまうと躾なおしは無理だと思いこんでしまうのだ。 先日、散歩の途中で他の犬が怖くてたまらないというキャバリアの男子に会った。うちの2頭は興味津々でさっそく挨拶をしに行きたがったのだが、このキャバくん、デカ犬2頭の姿にすっかり怯え尻尾が脚の間に入ってしまった。うちの犬は、ほんとうに他の犬が大の苦手でと嘆く飼い主さんに、いくつですか? と訊いてみたところ 「もう2歳ですからね、治りませんよ」 という答えが返ってきた。2歳なんて一番トレーニングしやすい時期なのにね。このコは犬嫌いと諦めてしまわずに、ゆっくり少しずつ慣らしていけば数年後にはある程度は犬嫌いなんて治るのに。もったいないことだ、と管理人は思うのだ。 姫は4〜5歳で、犬猫屋敷にやってきた。当初はオスワリもできないコで、お粗相の癖が抜けず、子どもが大嫌いで隣の公園に子どもが来ているといっては絶叫しまくっていた。 いまはオスワリフセができるようになり、トイレの失敗もヒートの時期を覗いてはほとんどなくなり、子どもが正面から1m以内に近づいてきたとき以外は尻尾も下げずに黙って通りすぎることができるようになった。 姫を世話してくれた保護団体の人は、もしかしたらあのまま姫を飼っていくことを期待したのかもしれない。だが、管理人は姫を引き取った時点で、問題があれば直して飼おうと決めていた。単に本の中での知識だったが、成犬の躾なおしは可能だということを知っていたからだ。じっさいにやってみて、やっぱり本に書いてあったことは嘘じゃなかったと実感した。 成犬から犬を飼おうという人が少ないのは、パピーがとにかくめちゃくちゃ可愛いというのも理由のひとつだが、もうひとつには成犬から飼うことのノウハウが確立していないという問題もあるのだろう。パピーから飼うためのノウハウは巷に溢れかえっているものの、成犬をどう扱っていいか手取り足取り教えてくれる人はなかなかいないのだ。じっさいにやらなければならないことはパピーとほんとうに何も変わらない。ただその犬が背負っている過去を想像してちょっとばかり工夫が必要になるだけだ。 そんなことを知っている人が増えるだけでも、じつは状況を少しでも変えることになるんだろうな、と管理人は思っている。成犬から飼う人が増えるだけではなく、いままでは「もう2歳だから直せない」と諦めてしまっていた人が、もう一度一からやりなおしてみようと思ってくれるだけで、放棄犬予備軍の数割はおそらくそのまま飼い続けてもらえるからだ。 遠い遠い道のりだがね。それでも何もやらないよりはちょっとマシ。少なくとも管理人はそう思っているのだ。 |
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