ブリーダーって?〜その2〜
2006 / 12 / 29 ( Fri )
欧米のブリーダーの場合は、ふつう扱う犬種は限定される。たいていは片手ぐらいが関の山で、単一犬種を何十年も作出し続けるというのが当たり前だ。それぞれの犬舎ごとに犬にも特徴があって、たとえば同じゴールデンでも、プロの目から見ればこのコは○○犬舎出身のコだというのが一目でわかるものなのだ。ある犬種の犬が欲しいと思ったら、人はその犬種を専門に作っているブリーダーさんの元に行く。すばらしいブリーダーさんであれば、何年分ものウェイティングリストができていて、どうしてもその犬種の犬が欲しいのなら、そのリストの最後に名前を書いて数年間待つ覚悟が必要だ。

ブリーダーのところで生まれる子犬は、生まれた時点でショードッグになる犬たちと、ペット用として一般家庭に行く犬にわけられる。ショードッグになる犬たちは、ショーに出てチャンピオンを目ざし、繁殖犬となっていく。ペット用の犬たちを譲り受ける場合には、繁殖に使わないという誓約書を書かされる。ブリーダーが繁殖に適さない犬と判断した犬が、むやみに繁殖犬として使われることを防止するためだ。訴訟社会であるアメリカの場合、この誓約書はまさに契約書そのものなので、万が一それを破ったときはとうぜん訴訟の対象となる。

ブリーダーから犬を買う場合、日本の保護団体もビックリの厳しい審査が待っている。金を払うんだから黙ってよこせという理論はここでは通用しない。きちんと犬を飼える環境なのか、その犬種にあったライフスタイルの家庭なのか、ブリーダーと飼い主候補がよく話し合って、きちんと最後まで飼えるとなったら、ようやく犬を売ってもらえる。

そこまでやっておきながら、そのあとにちゃんとしたセーフティーネットもついている。万が一その犬を飼い続けられなくなった場合、必ず売り主であるブリーダーの元に返すことという条項が契約書に盛り込まれるのだ。ちなみに良心的なブリーダーは、返しに来た客に、犬の代金全額を返金する。そうしておけば、飼えなくなったときに、ちゃんとブリーダーの元に犬を返しにくるからだ。むろん、ブリーダーとしては金銭的な損害を被るわけだが、犬の命には替えられない。

ブリーダーのなかには、犬の販売価格のなかに基本的な服従訓練のレッスン料を含めて売っている場合もある。とくに大型犬の場合には、きちんとしたトレーニングをしないために飼いきれなくなるケースがあるからだ。最初からレッスン料込みで売っておけば、飼い主は否が応でも基本的な服従訓練のレッスンを受けに来る。これも犬の幸せを守るためのセーフティーネットの役目を果たす。

ふつう、名のあるきちんとしたブリーダーならば、売れるからといって乱繁殖はしないものだ。犬は生後1年ほどで交配可能な身体になるが、じっさい繁殖に使うのは、身体がきちんとできあがった2歳前後からで、物理的には年に2回出産可能な犬であっても、毎年立て続けにヒートのたびに交配させるような無茶な真似はぜったいにしない。たいていの犬は成犬として身体が完成したあと数年間で、せいぜい片手の数繁殖に使われて、その後はそのままブリーダーのもとでふつうのペットとして一生を終えるか、一般家庭にペットとして譲渡される。元繁殖犬たちも、ふつうのペットとして残りの犬生を人と楽しく暮らしていくことになる。

ほんとうのブリーダーから買う犬は、たしかに値段が恐ろしく高い。なかにはペットショップで売られている同犬種と桁が違うというケースもある。だが、きちんとブリーディングをしているブリーダーには、高い値段をつけざるを得ない事情がある。犬の身体を一番に考えて、無理な乱繁殖をしない分、販売できる子犬の数は限られる。健康な母体を保つために良質の餌を与え、快適な環境を整備しようと思えば、とうぜんコストは上がるのだ。それを子犬の販売価格に上乗せするのはとうぜんだし、それだけの価値があるからこそ、人はわざわざブリーダーのもとに犬を買いに行くのだ。

現状では、ペットショップで犬を買うことを全面否定するつもりはないのだが、「激安! ブリーダー直販!」などの文字が躍る大型ペット店の生体販売コーナーを見るたびに、管理人は首を傾げたくなる。ほんとうのブリーダーが2ヶ月足らずの子犬を箱に詰めて出荷するとはどうしても思えないからだ。ほんらい、親犬やきょうだい犬たちと一緒に過ごすべき大切な社会化期に、ガラスのなかでポツンと座っている子犬を見て、怒り狂わないブリーダーなどブリーダーではないと思うからだ。

どんな人でも、安く手軽に欲しいものが手に入る社会。いっけん理想的に見えるけれども、犬や猫までそうやって手に入れられることが果たして良いことなのだろうか?

「ネットで買うと安いのよ。チワワがなんと、半額!」

なぜ半額で売れるのか。それでも利益が出るのはなぜか、今度ペットショップに行ったとき、ガラスケースのなかにいるパピーを見ながら、ぜひとも考えてみてもらえないだろうか? 広島や、その他のいわゆる繁殖所崩壊の写真を見るとき、なぜこの犬たちは、この場所にこうしていなければならないのか、考えてみて欲しいのだ。

たまたま見にいった華ママさんのブログに愛犬が入院した話が書いてあった。管理人も前に会ったことがあるダックスの政宗くんだ。鳴き声を聞いて声帯除去手術をされている犬だというのはわかっていたし、華ママさんはそういうことをする人ではないので何か過去に事情があるのだろうと思っていたが、この記事を読んで、何があったかようやくわかった。

政宗くんは、たまたま珍しい色の犬だったために、自称ブリーダーのあいだでたらい回しにされてしまった。たまたま行った先で、鳴き声がうるさいと声帯除去手術をされていた。珍しい毛色の犬だから繁殖に使おうと思う時点で、そんな奴らはほんもののブリーダーとは言えない。ダックスのようなもともと吠えるように作られた犬を吠え声が問題になる環境で飼う時点で、ブリーダーを名乗る資格などないはずだ。ましてや、吠え声がうるさいからと、吠えなくてもすむ環境造りをせず、トレーニングもせず、安易に声帯除去手術をするような人間は、ブリーダーどころか犬を飼う資格さえないはずだ。

だが、この国にはブリーダーの資格制度など存在しない。誰でも自称ブリーダーにはなれるのだ。それがほんものか、偽物か、こちらが見分けられなければ、いつまでも自称ブリーダーが幅をきかすことになる。

ほんもののブリーダーは犬のプロでなくてはならない。ほんもののブリーダーは自分の犬に愛情と誇りを持っているものだ。少なくとも、管理人はそう思っているし、そういう人だけがブリーダーと呼ばれる世の中になって欲しいと願っている。

参考にどうぞ→All About 犬を迎える方、ブリーダーを探す方のために

テーマ:犬との生活 - ジャンル:ペット

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