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甘やかし

管理人はめっぽううちのコたちに甘いダメ飼い主である。

ディーがまだ元気だったころ、彼は管理人がそばで見ていてくれないと食餌も喉を通らない甘ったれの犬だった。たとえば犬たちが食べているあいだに、自分の食事の用意でもしようと管理人がキッチンに行ってしまうと、とたんに餌皿を放置して管理人のあとを追って来てしまうのである。

放置された餌は、即座にお代わり分として姫の胃のなかに吸い込まれる。ゆえに、管理人は出稼ぎの朝の忙しいときでも、お犬さまのお食餌におつきあいし、そばで「よく食べたねぇ~エライねぇ~」と賛辞を繰りかえしていたのである。

いまは、カイがこの状態になっている。以前は放っておいても食べたくせに、最近は管理人の姿が見えなくなると泡を食って探しに来る。悪い習慣は一度つけてしまうと直らない。そして悪い癖に限って群のなか脈々とで継承されていくものなのである。

しつけ本やしつけサイトの類を見ると、「犬は強いリーダーに従う習性があるので、厳しく接するべし」などと書いてあるのをよく目にする。以前の管理人は「強いリーダー」とは何か、と深く考えもせず軍隊式に「管理人の意に沿わぬことをするのは許さん!」とばかりにビシビシやっていた。いま考えると褒めることより叱ることのほうが多い暴君だったと思うのだが、うちに来た当初、ご意見無用のハイパーパピーだったツチノコ兄弟をまっとうな犬に育てるまでのあいだは、それが正しいのだと信じ込んでいたのである。

褒めるしつけとは何なのか、強いリーダーとはどうあるべきなのか、そんな根本的なことを考えるようになったのは、姫が我が家にやってきてからだ。

姫は暴君飼い主にことごとく反抗した。姫にとって管理人に叱られることは、おそらくとても嫌な経験だったが、それでも悪い行いは止むことがなかった。その場ではいったん塩らしい態度を見せても、すぐに同じことを繰りかえす。

やりかたを変えねばこのまま堂々巡りが続く、と気づいたのが、基本的な飼い方を見直そうと思ったきっかけだった。いままでのやり方を否定するのは決して楽ではなかったが、姫を飼い続けていくためには、ベストの方法を模索するしかなかったのだ。

管理人は姫を飼いはじめて、ほんとうの「褒めるしつけ」とは何なのかほんの少しわかったような気がする。結果、犬たちは以前に比べて甘やかされているかもしれないが、それでも終わりよければすべてよしでうちにはこの方法があっていたのだ、とつくづく思う。

犬の要求を一から十まで聞いてやるのは、わがままを助長することになるし、結果的に飼い主も犬も不幸な結果になるのだが、だからといって飼い主の要求だけを一から十まで聞けというのも、犬の立場にしてみれば理不尽かもしれないと思うに至った。だから、管理人は以前に比べるとかなり甘い飼い主になった。ただ、ここはダメだと決めたことに関しては、以前と同じように暴君だ。どこまでは譲歩してどこからは許さないか、その線引きがうまくできると、犬との生活も楽になる。そしてそれを判断し、決めるのは、それぞれの飼い主がやるべきことなのだ。

犬のわがままを許してはならない。犬に嘗められちゃいかん、と肩肘張って暮らすのも、犬との生活のやりかたのひとつだとは思う。そうしなければ飼えない犬もいることだし、飼い主がそうすべきだと判断するなら、そういう方法も悪くないだろう。だが、管理人は以前に比べて甘い飼い主になったことで、肩の荷が下りてより一層犬との生活が楽しくなった。ただ将来、また別の犬を飼いはじめたら、この考えも変わるかもしれない。それは管理人も判らない。

犬との暮らしで飼い主も変わる。犬と一緒に成長していくことが、管理人の犬を飼う楽しみだ。

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